WordもExcelもAIが「最初から入っている」時代へ——Claude for Microsoft 365で何が変わる?中小企業の実践的な使い方

公開日: 2026年05月12日
カテゴリ: ツール紹介
経営者の方へ
毎日使っているWordやExcelにAIが標準搭載される時代が来ました。「AIを使う」という特別な作業が、もう必要なくなります。
競合他社がこの機能を使い始めると、提案書や見積書の作成スピードに明確な差がつき始めます。AI推進担当者の方へ
AIが「外部ツール」から「いつも使うソフトの中の機能」に変わりつつあります。社員への研修ハードルが大きく下がるタイミングです。
この記事でわかること
- 「AIって結局どこで使うの?」という疑問の答え
- Claude for Microsoft 365が普通のAIチャットと何が違うのか
- 製造業・小売業・サービス業での具体的な使い方
- 「うちの会社で使えるかどうか」を自分で判断できる基準
- 今週中に無料で試せる最初の一歩
まず一言で言うと
要は「WordやExcelを開くと、最初からAIが助手として待機している」という状態になります。今まではAIを使いたいとき別のサイトを開いて、内容をコピペして……という手間がありました。それが、使い慣れたソフトの中で全部完結するようになりました。毎日使うメールソフトの中に優秀な文章校正担当者が常駐しているようなイメージです。
読む前に確認しておきたい言葉
| 言葉 | 一言で言うと | 身近な例え |
|---|---|---|
| Claude(クロード) | Anthropic社製のAI | ChatGPTやGeminiと同じ種類のAI |
| Microsoft 365 | WordやExcelが入った月額サービス | 昔の「Office」の最新版 |
| Claude for Microsoft 365 | WordなどにClaudeを組み込んだ機能 | Excelに計算機が内蔵されているのと同じ感覚 |
| Anthropic(アンソロピック) | Claudeを作った米国のAI企業 | OpenAI(ChatGPTの会社)と競合する会社 |
| 文脈を引き継ぐ | 前の作業内容をAIが覚えている | 同じ担当者に続きを頼める状態 |
なぜ今これが話題になっているのか
2026年5月、AnthropicというAI企業が「Claude for Microsoft 365」を一般向けに提供開始しました。
これまでAIを業務で使うには、ChatGPTやGeminiといった別のサービスを開いて、そこに文章を貼り付けて、結果をまたコピーして……という作業が必要でした。
今回の変化は、その手間がなくなることです。WordでもExcelでもPowerPointでも、ファイルを開いた状態のままAIに相談できます。しかも、Wordで作った資料の内容をExcelでも引き継いで活用できます。
Microsoftのレポートによると、日本の生成AI普及率は2026年第1四半期に22.5%となり、伸び幅は世界平均の3倍超のペースで上昇中です。「様子を見ていたら、気がついたら周りが使い始めていた」という状況になりつつあります。
製造業での使い方:仕様書・見積書の下書きを任せる
製造業の現場では、見積書や仕様書の作成に大量の時間がかかります。「数字を計算するのは得意だが、文章を書くのが苦手」という営業担当者も多いはずです。
Claude for Microsoft 365を使うと、こんな流れになります。
Excelで見積書を作りながら……
- Excelに品番・数量・単価を入力する
- 同じ画面の中でClaudeに「この見積書をもとに、お客様へ送る提案メールの下書きを作って」と話しかける
- 30秒で下書きが出てくる。必要なら「もう少し丁寧な言い方に直して」と追加で頼める
- 気に入った文章をそのままメールに貼り付ける
従来の方法との比較:
| 作業 | 従来の方法 | Claude for Microsoft 365使用時 |
|---|---|---|
| 提案メールの作成 | 30〜60分 | 5〜10分 |
| 仕様書の文章確認 | 上司や先輩に頼む | 即座にAIが確認・修正案を提示 |
| 複数ソフトの行き来 | ExcelとWordを交互に開く | 同じ画面の中で完結 |
特に「Excelの数字からWordの報告書を作る」という作業は、多くの製造業・小売業で毎月発生します。この繰り返し作業こそ、今回の機能が最も力を発揮する場面です。
小売業・サービス業での使い方:接客マニュアルや販促文章を素早く作る
飲食店や小売店では、季節ごとのメニュー説明やPOP(売り場に置く販促物の説明文)を頻繁に作り直す必要があります。
PowerPointで販促資料を作りながら……
- PowerPointに新商品の写真と価格だけ貼り付ける
- Claudeに「この夏の新商品について、SNSに投稿する短い紹介文を3パターン作って」と頼む
- 3種類の文章候補が出てくるので、気に入ったものを選んで微調整する
また、アルバイト向けの接客マニュアルも作りやすくなります。
Wordでマニュアルを作りながら……
- 「お客様が返品を希望してきたときの対応手順を箇条書きで書いて」とClaudeに頼む
- 出てきた下書きをもとに、自店のルールに合わせて修正する
- 「わかりにくい言葉がないか確認して」と頼むと、難しい表現を指摘してくれる
マニュアル作りのような「大事だけど時間がかかる」作業を、普段使いのWordの中でそのまま進められます。
士業・バックオフィス業務での使い方:書類作成とメール文章の品質を底上げする
税理士事務所や社労士事務所、また中小企業の総務・経理担当者にとって、「正確な文章を早く書く」ことが毎日の仕事です。
Wordで議事録を作りながら……
- 会議後にメモした箇条書きをWordに貼る
- 「これをもとに、参加者全員に送る議事録の形式に整えて」と頼む
- 宛名・日付・決定事項・次回アクションの形式に自動的に整理される
- 内容を確認して送付するだけ
文章の品質チェックを依頼する場合……
- お客様向けに書いた書類をWordで開く
- 「この文章に誤解を生む表現や、失礼に当たる言い方がないか確認して」と頼む
- 指摘箇所とその理由が表示される
ここで重要なのが「文脈を引き継ぐ」機能です。WordでAIに話しかけた内容を、そのままExcelでも参照できます。たとえば「さっきWordで整理したお客様の要望に合わせて、Excelの見積表を作って」という指示が通るようになります。これが従来のAIチャットとの大きな違いです。
なお、AIツールを選ぶときの基本的な考え方については、[ChatGPT・Gemini・Copilotどれを選ぶ?中小企業がAIツールを選ぶときに最初に確認すべき3つのポイント]も参考にしてください。
フィノジェンの見解:「うちで使えるか」を判断する4つの確認ポイント
「便利そうなのはわかった。でもうちで使えるのか?」という疑問に答えます。以下の4つで自己判断できます。
ステップ1:今、何のOfficeを使っているか確認する
☑ 毎月お金を払って使っているMicrosoft 365のプランがある → 次のステップへ
☐ 昔に一度だけ買ったOffice(例:Office 2019など)を使っている → まずMicrosoft 365への切り替えが必要
ステップ2:月にどれくらい「書く作業」があるか
| 状況 | 優先度 |
|---|---|
| 週に3回以上、Word・Excel・PowerPointで書類を作っている | すぐ試す価値あり |
| 月に数回程度 | 試してみて、効果を測ってから判断でよい |
| ほとんど使わない | 今は急がなくてよい |
ステップ3:「同じような書類を何度も作っている」かどうか
☑ 毎月同じ形式の報告書を作っている
☑ 季節ごとに案内文を作り直している
☑ 新しい社員やアルバイトが入るたびにマニュアルを更新している
→ 上記に1つでも当てはまれば、時間短縮の効果が出やすい
ステップ4:社内で「最初に試す人」がいるか
AIツールは最初の1人が使い始めると、他の人に広がりやすくなります。「ITが少し得意な人」「新しいものに抵抗感が少ない人」を1人見つけておくだけで十分です。
判断まとめ
- ステップ1〜4がすべて当てはまる → 今月中に試し始める
- ステップ1だけ当てはまらない → まずMicrosoft 365の契約確認から
- ステップ2・3が「月数回以下」 → 半年後にもう一度確認する
行動プラン
今週中にできること(お金ゼロ・1時間以内)
- 自社のパソコンにインストールされているOfficeがどのバージョンか確認する(「スタートメニュー」→「Word」を右クリック→「詳細」で確認できます)
- Microsoft 365を契約済みの場合、WordやExcelを開いて右側にAI機能のアイコンや「Copilot」のボタンがないか探してみる
今月中にできること
- Microsoft 365の管理者(社内のIT担当者または契約している業者)に「Claude for Microsoft 365は使えるプランか」確認する
- 社内で1人、一緒に試してみる人を決めて、実際に議事録か提案メールの下書きを1つ作ってみる
3か月後の理想像
毎月かかっていた議事録・報告書・案内文の作成時間が、週あたり2〜3時間短縮されている状態です。社員の誰かが「これ便利だった」と言い始め、使う人が自然と増えている状態が目標です。特別な研修なしに、日常業務の中で少しずつ定着していくのが理想的なペースです。
よくある不安・疑問
Q1. 「AIって難しそうで、うちの社員には使いこなせないのでは?」
WordやExcelを普段から使っている人なら、追加で覚えることはほぼありません。「話しかける」だけで使えます。「件名を考えて」「もう少し短くして」というように、普通の言葉で頼むだけです。実際に試してみると、多くの方が「これなら使えそう」と感じています。
Q2. 「費用がかかるのでは?」
Microsoft 365をすでに契約していれば、プランによっては追加費用なしで使える場合があります。まず現在のプランを確認することが先決です。新規で契約する場合も、1人あたり月数百円〜数千円の範囲が多く、作業時間の削減効果と比べるとコストは低い傾向にあります。
Q3. 「入力した情報が外に漏れないか心配です」
Microsoftのビジネス向けプランでは、入力したデータをAIのモデル訓練に使わないという設計になっています。ただし、機密性の高い情報(個人情報・契約書の詳細など)をそのまま入力することは避け、「概要だけ入力して文章の形を作る」という使い方をお勧めします。AIの動作に不安を感じたときの確認方法については、[「なぜかAIの回答がおかしい」を放置しない——中小企業がすぐ始められるAI動作チェック3つのポイント]も参考にしてください。
Q4. 「製造業だから、デスクワークが少ない。うちには関係ない?」
製造業こそ、見積書・納品書・工程報告書・取引先へのメール……と書類作成業務は多いです。現場の仕事はもちろんAIには任せられませんが、「書く作業」を週に数回でもやっているなら十分に効果を感じられます。
Q5. 「ChatGPTとどう違うの?どれを選べばいいの?」
ChatGPTは別のサイトを開いて使う外部ツールです。Claude for Microsoft 365はWordやExcelの中に組み込まれているため、作業の途中でそのまま使えます。「普段WordやExcelをよく使っている」なら、Claude for Microsoft 365が最もなじみやすい選択肢です。ツール選びの詳しい考え方は、[ChatGPT・Gemini・Copilotどれを選ぶ?中小企業がAIツールを選ぶときに最初に確認すべき3つのポイント]をご覧ください。
参考文献
- Claude for Microsoft 365が一般提供へ - https://ledge.ai/articles/claude_for_microsoft_365_general_availability
- 日本の生成AI普及率、世界平均の3倍ペースで上昇 - https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2605/11/news122.html
- Anthropic、SpaceX提携で計算資源を一気に拡張 - https://www.businessinsider.jp/article/cutting-edge-20260511-anthropic-conference-spacex-data-center-capacity/
- ソフトバンク、国内AIデータセンター事業を本格展開 - https://japan.cnet.com/article/35247357/
- AIエージェントの雇用インパクトはまだ限定的——MIT Technology Review - https://www.technologyreview.com/2026/05/11/1137090/three-things-in-ai-to-watch-according-to-a-nobel-winning-economist/
- AIツール汚染が企業エージェントの新たな攻撃面に - https://venturebeat.com/security/ai-tool-poisoning-exposes-a-major-flaw-in-enterprise-agent-security
- Microsoft 365公式サービス概要(日本語) - https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365
- Anthropic公式サイト(Claude製品情報) - https://www.anthropic.com
この記事を書いたフィノジェンについて
フィノジェンは、AIを業務で使いこなしたい中小企業の経営者・推進担当者を支援しています。「理屈ではなく、今週から使える情報」をお届けすることを大切にしています
